林 香が制作する漆アクセサリーです。ひとつひとつ手彫りで木地から手がけています。使用する木材は朴、栃、桜など。糸鋸で形を切り出し、彫刻刀で木彫を施した木地に漆を塗っています。
■2023年春の新作■
・ダリアのブローチ 玉虫赤/プラチナ
漆の持つしっとりした質感と、華やかな印象のダリアを合わせてブローチを作りたいと思っていました。彫りや接着、その後の研ぎ等の工程に四苦八苦しながら生まれたこのダリアのブローチには愛着があります。



・虫喰落ち葉のブローチ 青壇塗・蝙蝠のブローチ 燻銀黒/黒・チューリップのブローチ ピンク/本朱/青



■漆のアクセサリーを製作するに至るまで■
私が漆に触りだしたのは夫と家族になってからです。美大卒ですが学部は美術学部ではなかったので、美術専門の学術や実技をきちんと学んだことはありません。ひょんなことからこうして夫と家族になり、まずは夫の仕事を手伝う形でこの道に足を踏み入れました。その手伝いの傍ら、自分でデザインした漆のアクセサリーを作り始めてから随分経ちますが、始めた当初は育児を最優先に制作をする形態でしたので、夫の展示会の片隅に工房作品として漆のアクセサリーがあったりなかったり、という変則的な展示であったかと思います。そんな中でお客様から、今回の展示にアクセサリーはないの?とありがたいお言葉を頂戴することがたびたびあって、門前の小僧の心に灯火がともった次第です。
ふいに”木工と漆を教えてくれ”と言い出したほぼ素人同然の妻に、漆の1から10までを根気よく教えてくれた夫には、感謝しています。
美術の学問を修めた訳でもなく、漆芸の研鑽を積んだ訳でもない私の目に映る漆の世界は、大変想像以上に広く奥深く、ほぼ独学の木彫のスキルも試行錯誤です。今でも手探りを続ける日々ですが、自分にとっては夫の仕事を手伝う日々がすなわち漆に触れたきた年月で、そこから自分の世界観を広げ感性を頼りに、”表現”という贅沢な仕事をさせてもらっている事に有り難さを感じます。また、更により良いものを作りたいとの想いは深まるばかりです。
本物の漆だけが持つ色、艶、手触りの柔らかさを備えた漆のアクセサリーを身につけることで、皆様が日々の楽しさや幸せを深めていただけたら嬉しいです。また今以上にそうなれるよう、今後も佳い作品を作っていきたいと思っています。
/林 香