変わり塗りとは、漆の持つ特性を活かし様々な技法や素材を用いて表現した、多様性のある塗りのことです

元は武士の持つ刀剣の、鞘を彩る堅牢な塗りとして発展したもののようです

僕がこの変わり塗りと出会ったのは学生の頃、大学院の研究テーマとして研究する内に理解を深めていったのが始まりです

その頃に研究素材として制作した変わり塗りの手板は約200種ほど、今も自宅倉庫に大切に保管しています

大学院生当時は、高野松山の図録や大学教授の文献などからテストピースの手板を制作し、その後は自己のオリジナルな表現方法を探して、伝統技法として伝わる変わり塗りの手法を融合させて試してみたり、素材を変えてみたり、より多くの表現が漆でできないか、日々研鑽していました

その中でも記憶に深いものは、学生当時アルバイトで通っていた京都の魚市場で、毎朝目にしていた鮮魚の美しい表皮です

マグロやヒラメ、ハマチや鯖など、彩りのある美しい質感を、変わり塗りの漆で表現したオブジェを多数制作しました

変わり塗りは、自分の中でも作家としてのオリジナリティを感じますし、漆と素材をより理解する上で、学生時代にとことん研究していて良かったと思える技法のひとつとなりました

今でも僕が変わり塗りで表現し制作し続けているのは、そこにひとつの魅力があるからです

それは漆や金属粉、炭粉、植物など、自然の素材が互いに良さを引出し合い、反応し合う、人の予測する以上の発見がいつもそこにあって、

毎回同じように手順を踏んでも、同じようにはいってくれない、その変化と驚きが、変わらず常にとても楽しいのです