ガラステーブル 胡麻竹塗/2022.5.12

’竹塗り’といって

竹は使っていないのに、竹の様に見える…そんな変わり塗りの伝統技法があります

この竹塗りのガラステーブルも中身は合板ですが、見た目は本物の竹みたいでしょう?

お客様にはよく、こんな大きな竹があるのね?!とおっしゃって頂く事が多いですが、いえいえ木でできていますとお返事すると大抵皆さま驚かれます

細かくいうと、竹塗りにも種類があり

このガラステーブルは胡麻竹塗りというものになります

胡麻竹塗りの他には、青竹塗り、煤竹塗りというのがあり、字のごとく青竹塗りは青竹を模したもの・煤竹塗りは囲炉裏の煙で燻された煤竹を模したものとなり、それぞれ若々しい緑色と風流な渋みのある茶色に仕上げる技法です

竹塗りは元々は江戸時代に刀の鞘に塗るための塗りの一つとしてあったようですが、その後明治になって新潟へ伝わり新潟漆器として発展したものと言われます

僕は大学院時代に各地の変わり塗りをひたすら研究していた時期があり、独立し工房を構えてすぐくらいの頃に、この胡麻竹塗りを取り入れた竹塗りテーブルを制作しました

人間国宝である高野松山の図録資料や本物の竹を参考に、漆と砥の粉を混ぜた錆で竹の節を作り上げ、竹の繊維はナイフでひと筋ひと筋切り込みをいれ、真菰粉(まこも粉)や炭の粉などでそれぞれ表情を作っていきました

1997年僕がこのテーブルを作った季節はちょうど夏の盛りでした

気温も高く暑さのつのる中、ナイフを片手に朝から晩まで1㎜間隔で切り込みを入れていくのですが、ぐるっとテーブルを一周し切り込みを入れ終わる頃には頭からつま先まで全身汗だくだった記憶があります

写真にある青竹塗りの蕎麦猪口くらいならまだしも、テーブルサイズともなると制作に相当な労力を要するので、正直二度とやりたくありません笑

とはいえ、この竹塗りを含めた変わり塗りの魅力というものに、20代の頃からずっと囚われ続けています

漆をつかって様々な自然の事象をとりいれていった先人達の技術に今後も学んでいきたいと思っています